経口免疫療法(ダニ、スギ)開始の予定

通年性アレルギー性鼻炎の主な抗原であるダニと、内地での季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の主要な抗原としてのスギに対する舌下免疫療法(sublingual immunotherapy=SLIT<スリット>)を近日中に開始します。
アレルギーを引きおこす物質(=アレルゲン)を体内に入れて、感覚的に表現すると「慣らす」治療法がアレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy=AIT)で、以前は減感作療法と呼ばれていました。
アレルギー性鼻炎の治療には、対症療法としての抗ヒスタミン剤などの内服薬やステロイドの点鼻薬を用いますが、AITはそういう対症療法の薬を使うことなく症状がないようにする、という、言わば根本的な治療法です。
食物を少量ずつ摂取して食べられるようにする方法が経口免疫療法(oral immunotherapy=OIT)ですが、これもAITのひとつです。 

体内に入れる方法(経路)がいくつかあって、歴史的には皮下注射での免疫療法(subcutaneous immunotherapy=SCIT<スキット >)が主流だったのですが、時間がかかる頻繁な受診が必要で、また医療者側としては注射液を作成するのに非常に手間がかかること、またアナフィラキシーの可能性がSLITに比べると高い点、などが弱点です。
SCITに比べると、痛みもなくまたアナフィラキシーの可能性も低いことなどから、しばらく前から(といっても30年ほど前から)SLITが増えてきました。
SLITは、舌の下に唾液で溶ける錠剤を含んで、しばらくしてからそれを飲み込む、という作業です。
また別の方法としては経皮免疫療法(epicutaneous immunotherapy=EPIT<エピット>)がありますが、まだ日本では実用には至っていません。

具体的には、SCITはごくわずかな量から始めて維持量に到達させますが、増量の仕方にはいくつかの方法があります。
増量期には一週間に1~2回の注射が必要で、維持量に達すると注射の間隔をあけていって最終的には4週間に一回の注射を3年間から5年間続けるものです。
恐らく注射をしてから30分間は毎回院内で様子を見るはずです。
増量期には、毎回計算をして抗原の量を増やしていきますので、医療者側にとっては希釈等の作業が手間がかかるのと、計算や希釈の間違いで抗原量が多く体に入ることによるアナフィラキシーが、実際に起こっています。
それに対してSLITでは、経過観察は初回のみです。
確かに初回のみは院内で経過を見るのですが、その後家庭では内服後は30分は経過を見る必要はあります。
増量期はアシテアが3日間で3日後には維持量となりますし、ミティキュアは増量期には一週間は毎日同じ量で、その後がすぐに維持量となります。

今回当院が始めるSLITは、ダニが原因でのアレルギー性鼻炎の患者さんが対象となりますが、内地でのスギのアレルギー(花粉症)があった方でまた内地に帰る予定がある沖縄在住の方がスギのSLITの対象となります。
沖縄はスギがありませんので、生まれてからずっと沖縄に住んでいる方はスギのアレルギーはありません。
ダニに関しては、塩野義製薬のアシテアと鳥居製薬のミティキュアを、スギに関しては鳥居製薬のシダキュアを用いますが、他に使える製剤は日本にはありません。
塩野義製薬と鳥居製薬の商品は使い方には少しの違いがあります。
どちらも初回だけは、院外処方の製剤を持って院内に戻ってもらって、アナフィラキシーが起きないかどうかを見極めるために内服後30分間は院内で様子を見ることが必須です。
当院でもアナフィラキシー対策は準備をしておきますが、統計としては年間に日本全国で数例程度です。
SLITは対症療法ではありませんので、数日間続ければよくなる、とい治療法ではなく、最低で3年間でできれば5年間は継続して治療を続けるものです。
それで効果が出れば、その効果が数年間は持続する、と言われています。
一か月に一回の通院が必要です。
軽症か重症かに関わらず実施できますが、重症の方の方がより恩恵を感じるだろうと思われます。
当然ながら、単一のアレルゲンだけの場合が最も効果が出やすく、いくつかのアレルゲンがある方は効果が出にくい側面はああります。
またアレルゲンに暴露された期間が短いほどAITは効果が出やすいので、そういう意味からは成人よりも小児の方が効果が高いはずです。
ダニのSLITを実施すると、その後のその他のアレルゲンによるアレルギー疾患(喘息やアトピー性皮膚炎など)の発症を抑える効果も確認されています。
一日一回の舌下での内服ですし、運動誘発性のアナフィラキシーを避けるためだと思われますが、「内服後2時間は激しい運動や入浴は避け、また家族のいる場所や日中の服用が望ましい」との記載が説明書もありますので、主に5歳以上が適応となりますから、実際に服用するのは、夜間の入浴後、になると考えられます。
適応があるのは、アレルギー性鼻炎でダニやスギが原因物質であることが証明された方となりますので、SLITを実施する前には必ずアレルギー検査(血液検査)をして抗原を確定させる必要はあります。
プリックテストでもよいのですが、手間がかかりますので、血液検査のみといたします。
SCITには気管支喘息に保険上の適応があるのですが、現在のところSLITでは気管支喘息には保険上の適応がありません。
ただダニのSLITは気管支喘息にも効果があることが示されているので、気管支喘息+通年性のアレルギー性鼻炎の患者さんには、望ましい治療であると考えます。
「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023」には6歳以上での追加治療として「ダニアレルゲン免疫療法」の記載があります。

最終的には内服薬を必要としない状態となる方が多いのですが効果が出ない方もいて、それを区別する検査がないので、服用を始めてから1年単位での評価(効いているのかどうか)はする必要があります
開始後1年後の評価で効いていないと判断したら中止することも可能で、中止したらまた症状が出てきてやっぱり効いていた、と考え直し(評価しなおし)た際には再開することもできます。

現在のところ対象者は、舌下に薬を保てる分別と理解がある子供さん(おおむね5歳以上)や当院を受診したことがある患者さんの保護者など、あるいはどうしても沖縄にいる間にスギのSLITを希望するこどもや成人で、一か月に一回の通院が可能でかつ、最低3年間は通院する意思と覚悟がある方が対象です。

SLITを実施する際には、実際の手順や開始日、3割負担での医療費の目安、アシテアとミティキュアの違いなどをもう少し詳しく記載します。

イメージとしては、初回診察では話を聞いて採血。数日から一週間後の再診で説明と薬の処方(一週間分)と院内での初回の服用、一週間後の受診とその後は特に何もなければ4週間ごとの再診、となります。
処方は余裕をもって一週間分多くの処方とするつもりです。




2026年7月11日