予防接種の受け方(1);考え方

 旧ホームページで公開していた「予防接種の受け方」の改訂版です。
 2016年10月から0歳児のB型肝炎が定期接種になって、記載を少し変えました。
 また全体が長くなるので、構成を分けました。
 興味があるところだけ読んでも構いません。
 あくまで当院の考え方で、他院の方針に干渉する/干渉されるものではありません。

 まず予防接種を受ける上で最も大事なのは、「予防接種で防げる病気」(vaccine-preventable diseases;VPD)は最悪の場合は命を落としたり、生存しても重大な後遺症を残す可能性がある病気だ、という点です。
 「予防接種で防げる病気」に罹ることなく普通に社会生活を維持するために予防接種があります。決して「受けても受けなくてもよい」ものではありません。
 予防接種は「予防接種で防げる病気」の抗体を積極的に作るアグレッシブな行為・作業です。
 「予防接種で防げる病気」に罹ると、その期間は集団生活ができない(学校や保育園・託児所に通えない)、あるいは社会生活ができない(友達と遊べない、買い物に行けないなど)等の本人にとっての学習や生活面での不利益や、保護者が仕事を休まなければならない等の経済的な負担があります。また、自分が病気になって、兄弟や周りの人にその病気をうつして様々な不利益を与える可能性があります。
 このように、その「予防接種で防げる病気」に罹ると、本人や家族・その地域や社会にとっては不利益です。
 そのような不利益を減らすために、予防接種が存在します。
 「予防接種で防げる病気」の、過去の悲惨な流行や多くの後遺症が残った教訓に学んで、次第に現在の予防接種ができてきた経緯があります。
 科学技術の進歩で段々と改善されてきたのが現在の予防接種で、まさに科学技術の恩恵です。
 「自分の子どもは罹らない・罹るはずがない」ではなく「かかる可能性があるからそれを予防する」のです。
 予防接種をしない場合の不利益が予防接種にかかる費用を上回ると考えられる場合には、社会が予防接種の費用を負担しても総合的には社会の出費が減りますから、その場合には公費の負担の予防接種(定期接種)となりますが、そうではないと考えられる場合には公費の負担とならず、「任意」の予防接種となります。
 「任意」とは、「接種をするかしないかは、保護者の決断と責任で決まる」という意味で、決して「接種してもしなくてもよい」という意味ではありません。
 時代の状況の変化での費用の増減や流行状況等の様々な条件で、「定期」か「任意」かが決まります。
 国や地域でそのような事情は異なりますので、すべての国で同じスケジュールで、というのはあり得ません。
 
 現在の日本で予防接種を受ける順序で大事なのは、今の時代の病気の流行状況の中で、何歳頃にどういう病気にどれほどかかりやすくてどれほど重症になりやすいか、という点ですが、最近は予防接種を受ける順番はおおむね固定してきました。
 予防接種の種類が多いので、同時接種(一日のうちに2種類以上の予防接種をうける)がお勧めです。
 同時接種は、病院を訪れる回数を減らすことで、待ち時間や他人との接触による感染を減らすことができますし、スケジュールを順調に早く終わらせることができます。
 同時接種で発熱などの症状が出る可能性は、単独で接種していても同様の症状が出る可能性がある程度で、決して「複数を同時に接種をしたから増える」訳ではありません。
 違う種類の感染をしても免疫がそれぞれにできるからこそ、混合ワクチンができる基礎があります。
 現在日本では4種混合ワクチンや13価の肺炎球菌ワクチンがあります。
 ですから同時接種には本数の制限はありません。
 「2種類だけ」とか「3種類だけ」に制限しているクリニックで、4種混合と肺炎球菌やヒブを接種しているのは矛盾です。

 注射は必ず痛みを伴いますので、できれば一度で痛いことを済ませるのがいいのではないかと考えます。
 
 その社会の大多数の者が予防接種を受けて抗体を持ち、その社会がその病気が流行しにくい状態にある場合に「集団免疫がある」と表現します。
 その集団免疫を獲得するのが予防接種の役割です。
 集団免疫がある場合には、その社会に「予防接種で防げる病気」の菌やウィルスが入ってきても、社会全体では決してアウトブレークはしませんが、その病気の免疫がない個人の小集団ではアウトブレークは起こりえます。
 だから、多くの方が予防接種を受けておかないといけませんし、集団免疫を早くつけるためにも早めに予防接種は受けるべきです。
 予防接種を受けない方針の方は集団免疫に反することをしている訳で、その点こそが予防接種を受けない方針の方が決して考ることがない点です。
 予防接種を受けない方針の方の「免疫を高める」「強くなる」ためのサプリや怪しげな食品・体操などは、単なるイメージだけで、要するに商売です。
 そんな程度で「予防接種で防げる病気」がなくなるのなら、とっくにもうなくなっているはずでしょう(!)。

 「定期接種」であれ「任意接種」であれ、すべての予防接種はできるだけ早期に受けるべきです。
 当院はそのような方針で臨んでいます。
 
 実際にどのように考えているのかは、次の「予防接種の受け方(2);考え方の実際」に続きます。

 
 
 

2018年1月25日